おひかえあそばせはTVの元祖ラブコメ

おひかえあそばせはTVの元祖ラブコメ

私にとって、日本の映画とTVドラマで「ラブコメ」の始まりではないかと思えるのは「おひかえあそばせ」で、主演はアフロヘアーにするまえの「石立鉄男」氏。(以下敬称略)

おひかえあそばせは雨天対策番組だった

「おひかえあそばせ」は日本テレビ系列で、1971年4月7日から1971年9月22日まで、水曜日の夜8時から夜9時(正確には数分前まで)の時間帯で全13話が放送されました。
TVドラマですが、当時はフィルム撮りの時代でユニオン映画が手がけ、この後の石立鉄男主演ドラマシリーズにつながる作品となりました。
放送期間の割に放送回数が少ないのは、野球中継があると「おひかえあそばせ」が順延にされたためです。
放送当時は10代から30代の視聴者にはかなり人気が出たのですが、同時間の裏番組はフジTVで大川橋蔵主演の「銭形平次」だったため、話題性や視聴率はいまひとつでした。
これは、そのころの夜TVのチャンネル権は、仕事から帰ってビールを飲んでいる父親にあったので、多くの家庭では「銭形」が選ばれてしまったためです。
石立鉄男は、それ以前の1969年にも山本陽子とTVドラマ「見合い恋愛」に出演していますが、この作品はコメディとまではいかないホームドラマがでした。
また、1970年には石立鉄男と岡崎友紀が共演した「おくさまは18歳」がありますが、このドラマでは二人が既に結婚しているので、ラブコメというよりは学園コメディーになっています。

TVがターゲットを若い人に変え始めた

しかし、次世代視聴者向けの番組を模索していたTV局は若い人達の人気に反応し、その後の榊原るみと共演「気になる嫁さん(1971年10月~1972年9月)」を制作しました。
その後、「チー坊」でお馴染みの杉田かおると共演の「パパと呼ばないで(1972年~1973年9月)」を制作します。
この辺りから石立シリーズに安定した人気が続くようになり、大原麗子と共演の「雑居時代(1973年10月~1974年3月)」につながります。
ちなみに、大原麗子と共演の「雑居時代」は、「おひかえあそばせ」の続編というか、リメイク作品です。
その後は、チャミーこと村地弘美と共演の「水もれ甲介(1974年10月~1975年3月)」などシリーズが続いていきます。
パパと呼ばないでからは家族愛に軸足を置くようになり、水もれ甲介をピークとして方向転換して1976年の気まぐれ天使と1977年の気まぐれ本格派で石立ワールドはひと段落するのです。
なお、石立鉄男は「見合い恋愛」では当時の青年の普通の髪型、この「おひかえあそばせ」と「気になる嫁さん」では、当世風の少し長めの髪型でしたか、「気になる嫁さん」の収録後イタリアへ行き、戻ってきて「パパと呼ばないで」の収録時には「アフロヘアー」になっていたそうです。

おひかえあそばせのキャスト

脚本:(メイン)松木ひろし(1928年11月16日 – 2016年9月19日)
監督:(メイン)千野 皓司(1930年12月17日 -)
レギュラー主演者
主人公(薫) 石立鉄男 放映開始時28歳 (1942年7月31日‐2007年6月1日)
六人姉妹の父親 大坂志郎 放映開始時51歳 (1920年2月14日 – 1989年3月3日)
長女 富士真奈美 放映開始時33歳 (1938年1月15日 -)
次女 宮本信子 放映開始時26歳 (1945年3月27日 -)
三女 嘉手納清美 放映開始時24歳 (1946年9月11日 -)
四女 岡田可愛 放映開始時22歳 (1948年10月19日 -)
五女 鳥居恵子 放映開始時19歳 (1951年7月19日 -)
六女 津山登志子 放映開始時17歳 (1954年1月25日 -)
長女の夫 山崎唯 放映開始時37歳 (1933年5月29日 – 1990年12月30日)
薫の友人 山本紀彦 放映開始時27歳 (1943年5月10日 -)

コメディの三段展開パターンが登場

「おひかえあそばせ」のストーリーは、六人姉妹の父親(大坂志郎)が薫を名前で女性と「思いこんだ」ことから始まり、第6話の岡田可愛の台詞「えっ、ご主人が妊娠なさったんですか!」に代表される「思いこみ、勘違い、早とちり」といった今ではラブコメの王道になっているパターンが繰り返されるという、当時は斬新なドラマでした。
また、これに続くシリーズは、誇張されたりパターン化している場面が多いのですが、本作は手探りで試行しながら作っているため、話の脈絡が薄いと感じる回もありますが、ストーリーをゴリ押ししていないことに好感が持てます。

キャストも力まずに自然体のような演技なことと、本来二枚目の石立鉄男も三枚目路線に徹する前の二枚目半のポジションなので魅力があります。
賑やかしの富士真奈美の役については、本作が始まる前の3月末まで「細腕繁盛記」に出演していたので、そのキャラとダブらないようにした結果かもしれません。
「サインはV」では少しやせていた岡田可愛も、以前の「青春学園ドラマ4部作」時代のような丸顔に戻りつつあり、愛嬌があってとても魅力的です。
まあ、一番の見所は「自然体の父親」役を軽々とこなしている大坂志郎の演技ではないでしょうか。

このドラマの良いところは、その後の作品にある、肉親の死や出生の秘密といった「陰」が無くて「カラッと明るい」こと。
私は、恋愛コメディーに「陰」はいらないと思うんですが、スポンサーとか代理店とかが「お涙頂戴」から抜け出せないんで、日本には「おバカコメディー」は多くても、おひかえあそばせのような「カラッと明るいコメディー」はごく僅かです。

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当時、最終回を見終わって「続編がある」と信じていたのは私だけでしょうか。
たぶん、製作サイドも同じキャストで「続編」を考えていた思うのですが、キャストのスケジュールを始めとして事務所や代理店やスポンサーのからみで、「雑居時代」のキャストに落ち着いたのでしょう。
しかし、今見直すと、あの最終回はハッピーエンドが多いコメディの中にあって、粋な終わらせ方だと思います。
私にとって、「おひかえあそばせ」はシリーズ中で一番好きな作品、紛れもない名作です。